世に、チョコレートほど汎用性のあるスイーツはないかもしれません。
老若男女を問わず人気があって、花束と同じようにプレゼントにも重宝されます。
苦味、酸味、甘み、濃厚さの全てがあり、あの小さなこげ茶の一粒一粒に、人を思わずにっこりさせる魔法がかかっているようです。
そんなチョコレートに、ひとかたならぬ情熱を燃やすのが、ベルギーの人々。我々の知る高級チョコレートショップは、今や老舗からニューフェースまで、そのことごとくがベルギー発と言っても過言ではありません。
ベルギーのチョコレートを語る前に、EU内部を二分する「チョコレート戦争」について、簡単に触れておきましょう。
EU発足当初からずっと、チョコレートの定義をめぐっては、ベルギーをはじめフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ギリシア、オランダなどの「本格」派と、英国やスカンジナビアン(北欧諸国)を中心とした「自由」派とに別れ、激しい攻防を繰り広げてきました。
後者が、
「ちょっとくらい混ぜ物(他の植物油脂を代用油として加えること)をしても良いじゃないか。俺たちはそうやってきたんだし、実際旨いんだし」
というのに対し、後者は頑なに
「カカオバタ−100%!それ以外は絶対に認められない!」
ということで、両者一歩も引かず。
結局、今は5%までの代用油脂の使用を認め、5%以内であれば各国で使用基準を決められる、つまり、本格派諸国はこれまで通り100%カカオバターのみをチョコレートとして国内で規制することもできる、という決定で一応落ち着いています。
この話を聞いて、フィンランドを旅した時に、老舗のチョコレート店の味に少しばかりがっかりしたのを思い出しました。フィンランドは「自由」派だったのです。
英国のチョコレートはミルクチョコが主流で、たとえば大手キャドバリーなどは信じられないほどにただただ甘いチョコレートを出していますが、人々はこれを喜んで食べているので、まぁそういう嗜好なのでしょう。
個人的に、英国のチョコレートで美味しいと思うのは、Elizabeth Showのミントチョコだけですが。
長いこと馴染んできた味ですから、人に言われてやり方を変えるのをことさら嫌がる人種にとっては、「ほっとけよ」といったところかもしれません。
「ホワイトチョコはチョコとして認めない」派の私としては、個人的にカカオマスたっぷりのチョコレートの方が美味しいようには思うのですが、カカオバターがチョコレートであるか否かの判断基準となるのなら、これを使用しているホワイトチョコは堂々とチョコレートを名乗ってよいと言うことになりますね。
ちなみに、このチョコレート戦争はあくまでもEU内でのことです。日本のチョコレートには使用制限はありませんので、口どけをよくするために、カカオバター以外の植物油脂がかなりたっぷりと使われています。
さて、そんな正統本格派を自称するベルギー。有名店から小さな個人のお店まで、街中のいたるところにチョコレートショップがあります。
甘いチョコがお好きな方には馴染まないかもしれませんが、本場のチョコレートショップ巡りは、ベルギーに行ったら是が非でもやりたいことの一つです。
実際に訪れたお店を紹介しましょう。
- Godiva ゴディバ
高級チョコレート店の代名詞、ゴディバは、ベルギーでも高級店で、もちろん王室御用達。
今更ベルギーまで来て食べるものでもないか、と思いきや、ここでしか食べられないのがこちら。
生のいちごにゴディバのチョコレートをコーティングしたもの。各店舗で作っているのを見ることができます。
私はブルージュの街を散策中に小腹が空いたので、たまたま目についたゴディバの店で購入しました。
ミルクチョコとダークチョコの2種類がありましたが、店員さんにオススメを聞いたところ、
「断然ダークチョコ!」
とのことで、そちらをいただくことに。
6個ほど入って6〜7ユーロほどは、確かに安くはないのですが、「ゴディバだし」と考えると不思議なお得感があります。そしてこれを食べながら歩いていると、必ず
「あ、ゴディバのやつ食べてる!」
的な注目を集めます。実際に言われます。
さすがは世界のゴディバ。
味も間違いのない美味しさ。というか、間違いなく美味しい組み合わせなのに、ゴディバをフレッシュな果物にかけるなんて個人ではやりにくいので、日本でもやってくれたら良いのに、と思いました。
2. Neuhaus ノイハウス
ゴディバと双璧をなす高級店。ベルギーチョコの特徴と言われる「プラリネ」(詰め物をしたチョコ)や、チョコレート専用のボックスを生み出したと言われています。こちらも王室御用達。
私が行ったのはグランプラスに入っている店舗です。
カラフルながら重厚感のある、男女問わず好まれそうなお店でした。
お土産用の板チョコギフトも見た目が素敵なのですが、ぜひ、店内で個売りしているチョコレートをいくつか食べてみて、好きなものを自分のために買ってみてください。
あまりたくさん食べられなかったのですが、ぐるぐるのクロワッサンみたいなやつが美味しかったです。
以前は日本にも店舗があったらしいのですが、今は撤退しているのかな?実は私はベルギーに行くまで、ノイハウスというお店自体を知りませんでした。
3. Wittamer ヴィタメール
こちらは日本にも入っています。というか、おそらく日本にしか出国していない、チョコレートに一家言あるベルギーの、コアな人々に愛されるメーカー。こちらも王室御用達。
「ゴディバやノイハウスよりも美味しい」という人もいるのだとか。
ブリュッセルのサブロン広場に、パンやケーキを売っているカフェと、チョコレートだけを扱うショップが隣り合わせにあります。
周辺はアンティークショップやアートの店が立ち並び、広場ではアンティークマーケットが開かれることも。
もとがケーキ屋さんだけあって、ケーキ類も美味しそうでした。次から次へとお客さんが入って来て、パンを買っていきます。連れられているわんこも慣れているのか、リラックス。
ヴィタメールのチョコは前述の2店に引けを取らないくらい高い印象ですが、味はさすが。カフェも含めて、ベルギーでは必ず訪れたい店の一つです。
4. Pierre Marcolini ピエール・マルコリーニ
日本では高級店ですが、ベルギーではまだまだ若い、カジュアルな店。マルコリーニさん本人がショコラティエだけでなく、パティシエ、コンフィ(ジャム)職人やアイスクリーム職人でもあるので、本店の店内にはこれら全ての商品があります。
実を言うと、混んでいたので店内には入らなかったのですが、色とりどりの花が蔓のように巻きついた外観の装飾は、見事の一言。建物が大きいので、近くに行くとまさに見上げるような迫力があります。
ヴィタメールからグランプラスの方へ帰る道の途中で、一見の価値あり。
私は日本では高い、各国カカオの食べ比べセットのようなチョコレートをお土産に買ったのですが、正直あまり良さが理解できず…。こだわりはわかりましたけれど。キャンディー状のアイスクリームやエクレアがカラフルで可愛らしかったので、今度行った時にはそちらを食べてみたいと思います。
5. ?
ピエールマルコリーニの本店の混み具合に、早々に見切りをつけた時に見つけた店。
確か見たことのあるような店名だったと思うのですが、記憶が定かでありません。でも、店員さんも愛想よく、色々と説明しながら試食させてくれました。
シンプルな見た目ながら確かな美味しさに感動し、ここでは自分用のチョコレートを9つほど詰めてもらいました。
6. Galler ガレ
ベルギーの板チョコの老舗。空港はもちろん、スーパーやコンビニのようなところまで、とにかくどこにでもあるのですが、味は王室のお墨付き。
ミニサイズで様々なフレーバーがあり、詰め合わせも売られているので、お土産に迷ったらとりあえず買っておいて損はありません。
乗り換えにベルギーの空港を利用する時にも、ついつい買ってしまいます。
7. Mary マリー
日本のマリーチョコレートとは別物です。王室御用達ですが、日本には進出していません。
高価さに怯みつつ、そのあまりのファンシーさにお土産を衝動買いしてしまったのですが、あげた人からは
「甘かったわ〜」
との声。
一切参考になならず。
一番小さいので良いから、やはり自分用にも買うべきだったと思いました。こちらも次回の課題です。
8. Leonidas レオニダス
個人的にお気に入り。国民に1番愛されると言う、庶民的なメーカーで、わかりやすい美味しさの中にも、カカオやスパイスの香りがたちます。
ベルギーはどこを歩いてもこの店があるので、安心しきってしまい、帰りの空港で良いかと思っていたために、ジャンドゥーヤを買い損ねてしまいました。
日本にも店舗はあるようですが、やはり本場に行って食べるのとは味が違う気がしてしまうもの。
とにかく1日、散策しながら目についた美味しそうなチョコレートショップに入ってみるということをしていたので、覚えていない小さな店もたくさんありました。
行きたかったのに、やっていなかった!と言う店もありました。
しかしどこもレベルが高いのは確かで、特にブリュッセルはまさにチョコレートの激戦区でした。
美味しいチョコレートに目移りしながらの街歩き、格別です。
コメント