スコットランドの美味しいパブ飯

Made in スコットランド
エールパイとスコッチハイボール

スコットランドに留学中、私は不味いものを食べた記憶がほとんどない。

外食にしろ、家庭料理にしろ、そもそも平均点が低いだけで、ちゃんと選ぶか自分で作るかすれば何の問題もない。むしろ、日本ではなかなか食べられない味とサイズで、美味しい一皿にありつけると考えて良い。

食を目的に、とは言わないまでも、旅行中に食事を楽しむことは十分に可能だ。

ところで、先に一つ、はっきりさせておかなければならないことがある。

英国人(British)をイギリス人(English)として一括りにしてはいけない、ということだ。掘り下げる機会はまた別にあるだろうけれど、まぁ「長い歴史がある」ということである。

英国は真ん中のイングランドから、南西のウェールズ、北のスコットランドと、海を挟んだ北アイルランドに別れている。あるいは、この4地域をメインに、女王様の治める土地の集合である、と言った方が良いかもしれない。

この4地域、特にスコットランドやアイルランドの多くの人々は、未だにイングランド人に対して複雑を通り越して、あまり良い感情は持っていないと考えて良い。アイルランドの場合は、激しい紛争の末に、アイルランド国と英国内北アイルランドという立場に別れ、ようやっと落ち着いた。

スコットランドはつい最近、独立の可否を問う国民投票が行われ、なんとか否決したと思ったら、今度は英国がEU離脱を決めてしまったものだから、再び独立の気運が高まっている。

そんなことがあるので、アイリッシュやスコティッシュと話すときは、少しばかり気を付けるのが常識というものだ。「俺たちは俺たち」と思っているので、くれぐれも一括りにして話したりしないようにしたい。

で、そもそも、スコットランド人に言わせれば、自分たちはイングランド人よりよほどちゃんとしたものを食べてきているのだから、一緒くたにされるのは心外である、となるわけだ。

確かに、伝統料理という点では、イングランドより多いような気がする。

スコーンやショートブレッドは実はスコットランド発祥だし、マーマレードにダンディーケーキ、ハギス、魚の燻製なんかも、年季の入ったスコットランド料理だ。

それに、私はロンドンで一度、えらく不味いフィッシュ&チップスを食べたことがあり、こういう物でも美味しくなく作れるということに、むしろ妙に感心してしまったのを覚えているのだが、スコットランドでは少なくともこの種の店に当たったことはなかった。

スコットランドのパブ飯には(たぶん)ほぼハズレなし!

経験上、これくらいは言ってしまって良いように思われる。現地の人に人気のあるパブを聞ければ言うことないし、不安ならウェザースプーンなどのチェーン店を利用すれば万全だ。

パブ飯で特に好きなものをいくつか紹介しよう。

まずは言わずと知れた、フィッシュ&チップス。魚はいくつか種類があるが、Haddock(タラ)が多い。フライにフライの付け合わせ、これぞ元祖英国名物は、揚げ物のうまさを堪能できる。

味はついていないわけじゃないが、自分で好みに塩を振るのが本場流。そしてたっぷりビネガーを振りかけて食べるのがおすすめ。

お供はパブの定番ならビールでも良いけれど、個人的にはすり切り一杯とばかりに注がれたシードル(林檎酒)があれば最高だ。両手に余るほどの大きな魚のフライ+大量のchips(フライドポテト)なのに、ぺろっといけて、美味しい店のは胃もたれもしない。

写真はスターリングという街の市街地にあるパブのもの。

フィッシュ&チップスとシードル

お次はハンターズチキン。グリルしたチキンに、チーズやグレービーなど、お店独自のソースをかけたもの。写真奥はチーズが、手前にはグレービーをベースにしたソースがかかっており、実はチキンの下にハギスが敷かれている。

ハギスを鶏むね肉で包みベーコンを巻いて焼いた、いわゆるバルモラル・チキンの変形かなと思う。どちらもちょっと凝っていて大変美味しいので、スコットランドへ行ったらぜひ食べたい。

スコットランド名物のハギスは、スパイシーな臓物系ハンバーグを崩したような感じで、モツやらキモやら食べる文化のある日本人なら好きな人も多いと思うのだが、やはりそれなりに癖はある。例えば一人の時などに単品で頼むと食べ残してしまうかもと不安な場合には、こういった、なかに使われている料理を頼むのも手だ。

ハギス自体に存在感があって塊というにはもろい形状なので、料理に使うのはなかなか良い方法だと思う。スコットランドにはいくつかハギスのメーカーがあるが、各社ハギスを使用した料理のレシピを積極的に公開していると聞いたことがある。ハギスの味が好きな人は缶詰でも売っているので、買って帰って試してみても良いかも。

ちなみに、ハギスはやっぱりスコッチと一緒だと格別に美味しくなる。ガツンガツンとぶつかって染みる感じがたまらないのだ。

写真の店はエディンバラの有名店で、スコットランド版忠犬ハチ公のボビー君がいるところ。

ハンターズチキン

Bobbyの像

パブの定番をもう一つ。スカンピ&チップスはシーフード好きに限らずお勧めしたい一品だ。うちの家族もこれが大好き。

なぜか母がずっと

「スカンピのカラマワリ〜」

と連呼していたせいで、私は長いことイカ(カラマリ)と混同して勘違いしていたのだが、スカンピというのは欧州エビのこと。それにしては結構歯ごたえがあるような気がしたけれど、店によってはやわらかいものもあるのかも。

日本人にはなじみのある食べやすさなので、迷ったらこれにすれば間違いない。

スカンピ スターリング城近くのパブにて

最後は、英国全土で食べられる代表料理として、パイを紹介する。

パイというと、日本人は甘いパイを思い浮かべやすいけれど、英国では肉詰めパイや、シチューの上にパイののった料理をさす。

家庭料理だが、ミートソースにマッシュポテトを載せて焼いたシェパーズ・パイは、芋好きには文字通り垂涎の一品。かくいう私も、ラム肉を牛肉に替えてよく作ったものだ。マッシュポテトをリッチに仕上げるのがコツである。

パイに使う肉は、チキン、ポーク、ビーフにラムなどさまざまだ。

パブに限らず広く一般に食べられているのだが、シチューにパイがのったタイプはパブでも非常にポピュラーで、お酒にもよく合う。

汁物としてはスコッチブロスという素朴なスープもあるので、揚げ物で胃が疲れてきたら、こういった煮込み料理や滋味溢れるスープでほっとするのも良いだろう。

写真はエディンバラ旧市街のパブで、エールパイとスコッチのハイボールを頼んだ時のもの。エールパイというのは、牛肉をエールビールでじっくり煮込んだものにパイを添えた料理。

ちょうどエディンバラのウイスキー博物館Whisky Experienceの帰り道で、美味しいスコッチを飲みながら、おつまみと一緒に楽しんだ。

エールパイとスコッチハイボール

余談だが、英国でハイボールと言っても通じないので、「Whisky with/and soda」と注文しよう。ジンジャ―ハイが好きなら、「whisky and ginger beer」。知人のスコットランド人は寒くなってくると「cider whisky」が飲みたくなると言っていた。サイダーもウイスキーも英国内どこにでもあるので、試しやすくて飲みやすそうな組み合わせだ。

英国人だって、ウイスキーをロックで飲む人ばかりじゃないし、何といっても一番人気のビールは、ラガーにしろエールにしろ、とにかくたくさんの種類がある。

お気に入りのドリンク片手にパブ飯に舌鼓をうてば、旅の至福のひとときとなるに違いない。

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